先日、我が家の愛犬「くるみ」のお話をしました
犬は日本では縄文時代から家畜として飼われていたという人間とはとても縁の深い動物です。
ジャータカ物語というお話があります。
これは、パーリ語で書かれた古代インドの仏教説話集。
簡単に言えばイソップ童話みたいなものです
お釈迦様が釈迦族の王子としてこの世に生まれる以前、つまり前世のお話
ここではお釈迦様は天人、国王、大臣、長者、庶民、盗賊、あるいは象、猿、孔雀(くじゃく)、兎(うさぎ)、魚などの動物として生を受け、様々な善い行いや功徳を積まれます。
このジャータカ物語に犬が出てくるお話があります。
どんなお話かと言いますと・・・
昔、ある国の王様が、1頭の象を宝物のように、とても大切に飼っていました。
象のために立派な家を建て、水浴び用の池も造り、食事にも気を遣い、象番もつけて、
象は何一つ不自由なく暮らしていました。
しかし、近くにいる象番は象を可愛がるわけでもなく、餌の準備と掃除をするだけで
そっけない人間でしたので、象は一頭きり、とても孤独で寂しい思いをしていました

そんなある日、象の家に1匹の野良犬が迷い込んできました。
この犬は生まれた時から怖いもの知らず、勝手気ままに生きてきたので、自分より大きな象に怖がることもありません。象の家の中にズンズン入り、残した食べ物を食べ始めました。
家から一度も出たことがない象は、厚かましい犬の様子に、ただ驚くばかり。
目を丸くして見ていました。
犬は食べ終わり最後にピチャピチャと水を飲み
振り向くと、象はじっとこっちを見ています。犬はとっさに身構えました。

「こいつめ、何か文句があるのか?よし、もしこいつが怒ったら吠えてあの長い鼻に噛みついて逃げてやる」
しかし象はオドオドしてこちらを見るだけ、怒る気配もありません。
拍子抜けした犬は言いました。
「よぉ!俺に何か言いたい事でもあるのかい?」
すると象は・・
「あの・・・ぼくが食べ残したものなんかでごめんね」
「なんだそれ?おかしなやつだな!」
犬が大笑いすると象もつられて笑い、そして言いました。
「君はどこからきたの?外の世界の事を聞かせてくれない?」
犬はお腹も膨れましたので退屈しのぎに丁度良いと、少しだけ話をしました
さて帰るかと、犬が出て行こうとすると・・・
「あのさ、また明日、話を聞かせておくれよ。食べ物もちゃんと取っておくからさ」
「まぁ、気が向いたらな」
そう言い残して犬は出て行きました。
次の日、犬は食べ物にはありつけず、人間からは蹴飛ばされて、酷い目に遭ってしまいました。
「どうしようか・・・、象のやつは、世間知らずで面倒くさいけどなぁ・・・。
でも、あそこには食べ物もあるしなぁ・・・でも、俺の話を聞きたがってるから、まぁ行ってやるか」
犬は象の家に行きました。
「わぁ!よく来てくれたね!」
象は犬の顔を見るなり大喜びで、取っておいた食べ物を犬に食べさせました。
食べ終わると犬は、思い出話を始めました。
家族の話、楽しく暮らした時の事、しかし離れ離れになってしまった兄弟たち、そして人間にいじめられ辛かった時の事、思い出しながらつい涙がポロポロとこぼれてしまいました。
すると、隣で犬の話を聞いていた象が、ポロポロともらい泣きをしているではありませんか。
象に弱音を見せてしまった犬はなんだか恥ずかしくなってしまって、
「ちぇっ、世間知らずなやつめ」 そう言って外に飛び出しました。
象は、後ろから声を掛けました。
「また来てよ。待ってるから」
それから2~3日、犬は象の所に行きませんでした。
何となく、何をやっても気分が晴れないし、心のどこかで象のことが気になって仕方がありません。
「お腹も空いてきたし、そろそろあいつのところへ行ってやるかな」
照れくさそうに犬が顔を出すと、象は飛び上がって喜びました。
「そんなに騒ぐなよ~」
犬もなんだかとっても嬉しくなり、しっぽを振りたいのを我慢してそっけない態度で
ご飯を食べ、今度は楽しい話ばかりをしました。
やがて夜になり、犬が出ていこうとすると、
「ねぇ、どこへ帰るの?」
「どこと言われても・・・」
象に尋ねられ、犬は口ごもると、
「君さえ良ければ、ずっとここにいてくれないかい?」
象の意外な申し出に、犬はびっくりしましたが象のまっすぐな気持ちに嬉しくなり
「ここにいてもいいのかい?」
「もちろんだよ」
犬はとうとう嬉しさを堪えきれず、しっぽを振って家の中を走り回りました。
それからは象と犬は、食べるときも寝るときも、いつも一緒に過ごしました。
ところがある日、近くに住む村人が犬を見て、
「あの犬をうちの番犬に欲しいんだけど譲ってくれないかい?」
象番に頼みました。
象番は2匹が仲の良いことを知っていましたが、村人からお金をもらい
知らん顔をして、犬を渡してしまったのです。
引き離された像と犬は、鳴いて騒ぎました
しかし、どうすることもできませんでした。
それ以後、象はすっかり元気がなくなってしまいました。
食事もせず、水も飲まず、大好きな水浴びさえしなくなりました。
心配した王様は、象の体を調べさせました。
しかし、これといった病気は見つかりません。
大臣に原因を調べるよう命令しました。
大臣は象番を問い詰めると、とうとう仲良くしていた犬のことを白状したのです。
「象番よ、犬を渡したその村人は一体どこに住んでいるのだ」
「申し訳ございません。私の知らない男でございました」
そこで大臣は、家来たちに太鼓を叩いて村中を、
「象と一緒にいた犬を連れ帰った者に罰を与える」
と叫びながら回らせました。
その声は犬を連れ帰った村人の耳に届きました。
村人はびっくりして、慌てて犬を繋いでいたロープをほどいて離しました。
自由になった犬はものすごい速さで象の家に向かって走っていきます。
そして、象の元へ飛び込みました。
犬を見るなり象は大きな声で鳴いて喜びました。
鼻先で犬をくるりと抱え、自分の頭の上に乗せました。
こうして再開することのできた象と犬は、いつまでもいつまでも仲良く暮らしたということです。
なんだか、ほんわかするとても良いお話ですね。
このお話の象さんのように、柔和な素直な心で、出会う人出会う人に接することができたなら人間関係は円滑になりますし、沢山の人を幸せにできますね。
法華経の中に、一切衆生喜見菩薩という菩薩さまが登場します。
この菩薩さまはその名の通り、会えば誰しもが喜ばざるを得ないというお方で、どんな人もたちまちに笑顔にしてしまうという素敵な菩薩さまなのです。
それだけでも凄いのに、一切衆生喜見菩薩さまは仏道を精進して「現一切色心三昧」という全ての存在に対応してどんな姿でも現すことができるという神通力を得ます。
出会った人の望む姿に変化して、その人の最大の笑顔を引き出す。
そして、幸せになっていただく。
ドラゴンクエストの変化の杖というアイテムがあれば、可能なのでしょうが・・・。

現実的にそれは、難しい事ですね
肝心なことは、水のような柔軟な心で人に向き合うことかと思います。
水はその器に応じて自由にその姿を変化させます。
全てを流してしまう力強さも見せますが、時には乾いた土や人、動物を潤し、癒してくれます。
「これが自分だ!」という拘りも時には大切ですが、状況やその人に応じて柔軟に対応するという事は、出会った人を幸せにする第一歩なのかもしれませんね。