先日テレビを見ていますと、とある番組で石原都知事が、日本衰退の原因として「今の日本人は、政治家にしても役人にしても、企業人にしても誰しも、一番強いアイデンティティが『我欲』になってしまった、このことが日本の衰退の原因である」と仰っていました。
「我欲」とは一体なんでしょうか?辞書で調べてみますと、我欲とは、「自分一人の利益、満足だけを求める気持ち」と載っておりました。自分さえよければよいという個人主義、利己主義、またはエゴイズムと同じような意味でしょう。
欲望を全て否定して生活するのは不可能であり、人間が人間として生きるためには、ある程度の欲望は必要です。今の社会は便利さと人のニーズに合わせて、不自由さを解消するためにどんどん新しい商品や新しい商売が産まれています、豊かな社会を追い求めて、ある程度のお金があれば大抵何でも欲望を満たすことは可能になりました。
しかし、人の欲望は収まることを知りません。欲望というものは満たされればその場は満足しますが、また新しい欲望が次から次へと湧き上がるものです。そうしているうち、何かを得る代わりに自然と大切な何かを失っていくものです。
イソップ物語にこういうお話しがあります。
あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある朝、おばあさんがびっくりしておじいさんに言いました。
「おじいさん、大変です!うちのめんどりが、黄金の卵を産みましたよ」
「どれどれ、本当だ!」
めんどりは、毎日一つずつ、金の卵を産みました。それは、街で売ると大変高いお金で売れました。
貧乏な二人は大変な大金持ちになりました。しかし、だんだん欲が出てきました。
「毎日金の卵を生むくらいだ!体の中にはまださぞかし金がいっぱいあるにちがいない!」
おじいさんはめんどりを殺してお腹の中を調べました。
しかし、お腹の中には金のかけらもありません。普通のにわとりと同じでした。
妙法蓮華経普賢菩薩勧発品という妙法蓮華経第二十八番目のお経の中に、『少欲知足』という教えが出てきます。
文字通り欲を少なくし、足ることを知るという意味です。「知足」とは、「私はもうこれで十分です、こと足りました」と知ることを言います。もっと、もっと、と欲望を膨らますのではなく、もうこれで十分だ、これくらいにしておこうという心を持つことです。ものに溢れて、欲望を無駄に掻き立てる社会に踊らされずきちんと自分を持って生きること。そのことによって欲は少し小さくなります。
欲が小さくなればその分、満たされた心のまま生きることができますので毎日幸せに生きることができます。
先ほどのお話しにでてくるおじいさんおばあさんも「これで十分だ」という心があればそのまま豊かに幸せな生活ができたことでしょう。
社会が発展し豊かになることは確かに大切なことです。しかし、上手に欲望と付き合っていかなくては、大切なものを見失い、行きつく先は破滅しかありません。あくなき欲望をコントロールし、幸せに暮らす生き方は仏様の教えです。どうぞ、ご精進ください。