ようやく春を感じさせる季節がやってまいりました。今年も気がつくと三月の中旬になり、十八日から二十四日まで春分の日二十一日を中日として一週間「お彼岸」の期間がやってまいります。

「お彼岸」の期間は亡くなった方々、ご先祖様達がいらっしゃる世界「彼岸」と私たちがいる世界「此岸」が一番近づく期間です。これは日本独特の仏教行事で、聖徳太子の頃に始まったと伝えられ、江戸時代には年中行事として定着したそうです

「お彼岸」には先祖をしのび、自分が今生かされていることに感謝し、亡き人を想いながら、供養の法要や、お墓参りをするとともに、自らもいずれ彼岸に渡ることができるように精進する期間です。

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どのように精進すればよいかと言いますと、「六波羅蜜(ろくはらみつ)」という修行方法があります。ざっとあげますと、①布施(ふせ)波羅蜜②持戒(じかい)波羅蜜③忍辱(にんにく)波羅蜜④精進波羅蜜⑤禅定(ぜんじょう)波羅蜜⑥智慧(ちえ)波羅蜜の六つです。

言葉だけ見るとなんだかとても難しいですね。もうちょっとお付き合いください・・・。

まず、「波羅蜜(はらみつ)」とは私たちのいる世界である【此岸】からご先祖様達がおられる仏様、悟りの世界である【彼岸】へと渡る、という意味です。

簡単に言うならば、安穏な悟りの世界、仏様の世界へと渡るために、波羅蜜の前についている布施(施しの心を持つこと)、持戒(人としての決まりをもって暮らすこと)、忍辱(不平不満を耐え忍ぶこと)、精進(ゆっくりと着実に努力を重ねること)、禅定(心を静めて生活をすること)の修行をしましょう。ということです。

 そして五つの修行をすれば、今まで自分に気がつけなかったことに目覚めて自分の生活が変化していき、六つ目の「智慧」が得られるわけです。ここで言います「智慧」とは勉強ができるとか、頭がよいという知恵ではありません「仏さまの心」を意味します。自分の知恵を捨てて、視点を変えて仏様の心で物事を見ることが智慧です。

 さて、文殊菩薩という菩薩をご存じですか?

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「三人寄れば文殊の智慧」とも言われますように仏教では智慧を司る菩薩として大変有名な菩薩で、法華経のお経の中にも登場されています。

 こんなお話があります。

 むかしむかし、インドに悪人ばかりが住んでいる国がありました。

この国の人々は、いつも悪い事をしたり、乱暴をしたりしました。その事を知った目連(もくれん)というお坊さんが、仏さまにお願いしました。

「仏さま、わたくしを、あの悪い人たちが住む国へ行かせて下さい。何とかして、あの人たちを良い人間にしてやりたいのです」 すると仏さまは、にっこり笑って、 「それは良い行いです。大変でしょうが、頑張りなさい」 と、悪い人の国へ行く事を許してくれました。目連はさっそく悪い人の国へ行くと、人々に色々な話をして、良い人間になる為のお説教をしました。

「人間は悪い事をすると、その時は良くても後で必ず恐ろしい罰を受ける。そして死んでからも、必ず地獄へ落ちて苦しむのです。だから悪い事を止めて、良い事をしなさい。乱暴は止めて、困っている人を助けるのです!」

ところがいくら目連がお説教をしても、誰一人話を聞こうとはしないのです。 それどころか、 「はん、偉そうな事を言っても無駄だ。後でどうなるかよりも今が良ければいいのだ。お前なんか、帰れ、帰れ」 と、石を投げつけたりしました。目連は仕方なく、自分の国に帰ってしまいました。

さてこの話を聞いた、舎利弗(しゃりほつ)というお坊さんは、 「悪い人たちを導くには、やさしく言っても駄目だ。もっと、厳しくしないと」 と、仏さまの許しを受けて、悪い人の国へとやって来ました。

「お前たち、よく聞け!今すぐ悪い事を止めないと、地獄で永遠に苦しむ事になるぞ! 助かりたければ、おれの言う事を聞くんだ!」

けれどもこの国の人たちは、「何を偉そうに言っていやがる、帰れ帰れ!」やはり舎利弗を嫌って追い返したのです。その後も、五百人ものお坊さんが次々と出かけて行きましたが、誰一人成功した者はいませんでした。

そこで仏さまは、文珠(もんじゅ)という知恵のあるお坊さんを選んで、その悪い人の国へ行かせてみました。

悪い人の国へ着いた文殊は他のお坊さんたちとは違いました・・・

「ここは、何と良い国だろう。そしてここに住む人々は、何と立派な人たちだろう。こんな良い所へ来られて、わたしは実に幸せだ」 この悪い国と悪い人たちを褒め始めたのです。 

いくら悪い人たちでも、褒められればうれしいものです。そこで人々は、自然と文珠の周りに集まって来ました。中には文殊に、ごちそうを出す者さえいました。

「このお坊さんは、とても偉い人だ。おれたちの事をわかってくれる」 「そうだ。今までのお坊さんは、おれたちを見下していたが、この人はおれたちを理解してくれている」

文殊は、みんなから尊敬されました。

そこで文珠は、 「わたしの先生である仏さまは、わたしなどとは比べ物にならないほど、それはそれは立派なお方ですよ。その仏さまの教えを受ければ、あなた方はもっと幸せになる事が出来るのですよ」 と、言ったのです。するとみんなは、 「それならぜひ、仏さまの教えを受けさせてくれ」「おれもだ。おれも」 と、仏さまの教えを受ける事にしたのです。

それを知った仏さまは、文殊のことを大いに褒めて、 「よくやりましたね。人を導くのは、とても難しい事です。ただ人に考えを押しつけるのではなく、その人の考えを理解し、その人とうち解ける事が大切なのです。お前はその事に、よく気がつきました。お前のおかげで、悪い国の人たちも救われるでしょう」と、うれしそうに言いました。

この時から、優れた考えや知恵の事を『文殊の智慧』と言う様になったそうです。

物事を教えたり議論したりするとき、私達はどうしても自分自身の持ってる知識や経験で物事を判断したり、喋ったりしてしまいがちですが、その人その人が歩んできた人生や考え、環境に寄り添い、理解しながら接するということはとても大切なことですね。

さてさて、お彼岸の期間、一週間「六波羅蜜」を実践されて心がけられるだけでも皆様に仏様の「智慧」が備わり、豊かな生活がおくれるようになるかもしれません。是非実践されてみてください。

まぁ・・・・一番簡単で良いのは!!お寺の法要に参加されることですよ!!

一緒にお参りされて、法話を聴いて、心安らかに仏道修行にもなります!是非すすんでお寺の法要にご参加ください!!当山は3月21日(土) 11:00からです!!