台風もすぎ、すっかり涼しくなってきました。今年も気がつくと9月の中旬になり、19日から、秋分の日22日を中日として25日までの一週間「お彼岸」の期間がやってまいりました。「お彼岸」の期間は亡くなった方々、ご先祖様達がいらっしゃる世界「彼岸」と私たちがいる世界「此岸」が一番近づく期間です。これは日本独特の仏教行事で、聖徳太子の頃に始まったと伝えられ、江戸時代には年中行事として定着したそうです。
「お彼岸」には先祖をしのび、自分が今生かされていることに感謝し、亡き人を想いながら、供養の法要や、墓参りをするとともに、自らもいずれ彼岸に渡ることができるように精進しなくてはいけません。
どのように精進すればよいかと言いますと、「六波羅蜜」という修行方法があるんです。ざっとあげますと①布施波羅蜜②持戒波羅蜜③忍辱(にんにく)波羅蜜④精進波羅蜜⑤禅定(ぜんじょう)波羅蜜⑥智慧波羅蜜の六つです。言葉だけ見るとなんだかとても難しいですね。まず、「波羅蜜」とは私たちのいる世界である【此岸】からご先祖様達がおられる悟りの世界である【彼岸】へと渡る、という意味です。なので波羅蜜の前についている布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧の六つが修行方法です。
・布施とはどのような修行か?簡単に言いますと、誰かにものをあげることです。しかし、人に何かをしてあげるとき、人間の心には「他人にどう思われるか?」や「打算」が時に生まれる時があります。これが生まれてしまうと本当の「布施」にはならないんです。布施とはいかにして、他人のために何かをする時に自分の心の中の駆け引きやこだわりを捨てれるか?これが大切です。
・持戒とは、戒律(きまり)をもって暮らすことです。仏教では五戒といいます、五つの戒があります。①殺生をするな②盗みをするな③邪淫におぼれるな④嘘をつくな⑤酒を飲むなの五つです。
・忍辱とは、字の如く、耐え忍ぶこと。何から耐え忍ぶのかと言いますと、私たちは生きて生活している以上は必ず他人に迷惑をかけて生きているものです。「お互い様である」という心で他人の迷惑も少しは耐え忍んでいきましょう。ということです。
・精進とは、努力とか励むとかいう言葉とよく似ています。しかし、ただひたすらに、がむしゃらに頑張ることは本当の精進とは言いません。物事に対しての執着心を捨てて、あたりまえのことをあたりまえに、先を見据えてゆっくりと着実に努力を重ねることが精進です。
・禅定とは、座禅という修行がありますが、座禅をするときは集中して精神統一を行います。それと同じように、仕事をするときは仕事に、遊ぶときは遊びに、掃除をするときは掃除に、何事も片手間に何かをするのではなく、何かをする時は坐禅の修行をしているようにその一つに集中して行いなさいということです。
以上の五つの修行を実践しようとすると、今まで自分に気がつけなかったことに目覚めて自分の生活が次第に変化していきます。この際に得られるのが智慧です。一般的に言う「知恵袋」などの知恵は人が生きていきための学問、経験や本で学んだこと、人から聞いたこと、役に立つ知識を意味しますが、『智慧』とは仏さまの心を意味します。自分の知恵を捨てて、視点を変えて仏さまの心で物事を見ることが智慧です。
パッと見ると、わかってはいるんだけれどもなかなか難しいですよね。しかし、このお彼岸の期間、一週間心がけるだけでも仏様の「智慧」が得られて豊かな生活が送れるかもしれませんよ。是非実践されてみてください。まぁ、でも一番簡単でよいのはお寺の法要に参加して一緒にお参りされることですね!!ご先祖様の供養にもなるし、一緒にお参りしたり、法話も聞けて、仏道修行にもなりますね!!難しいことはありません、是非お寺で一緒にお彼岸の供養をいたしましょう。
*参考文献 主婦と生活社出版 「仏教早わかり百科」